【備忘録】三菱電機技報からみるMELSOFT MaiLab

目次

はじめに

三菱電機技報とは

三菱電機技報とは、お知らせによると、以下の引用のように書かれていました。

当社の研究開発方針、製品や技術に関する情報を論文形式で掲載している月刊誌です。

技術や製品の社内外への発信方式の1つのようです。

今回初めて三菱電機技報を知ったのですが、内容がとても興味深いですね。この機に登録してみました。
みなさまも是非登録してみてください。

例えば2024年09月号の【特集 「先進デジタル技術(後編)」】では、AIについていえば「三菱電機グループの持続的なものづくりを支えるAIソリューション群」「熟練技能継承に向けた技能評価AI技術」の2本があり、既存ソリューションと、これからソリューションになるだろう技術が載っていました。

三菱電機技報のMELSOFT MaiLabの特集

三菱電機技報2022年04月号で掲載された論文です。名古屋製作所の技術者の方々が執筆しているようです。
4ページなのですぐ読めると思います。

[特集論文] データサイエンスツール”MELSOFT MaiLab”を読む

以下、内容に対するコメントを中心とした備忘録を記載します。

要旨

MELSOFT MaiLabに関し論文全体を通して「(製造業含め)業界全体でデータの活用が重要視されているが、専門人材の不足に直面している。MELSOFT MaiLabは専門知識がなくても簡単にデータ分析ができる分析サポートツールである」ことがキーになっていると感じました。

ここで言う専門知識というのはデータサイエンスのことを指します。
細かくスキルを書くとすれば「統計学」「データビジュアライゼーション」「プログラミング」「データベース」といったスキルになります。

MELSOFT MaiLabの利用で,製造業のデータ活用の 敷居を下げて誰もがデータを活用した生産現場の改善でき るようになり,データ分析の民主化と企業競争力の向上に 貢献する。

これからの時代、誰でもどこでもデータの活用がますます盛んになっていく中で、やはりデータをうまく扱えないと競争に勝てなくなってくるのではないかと危惧されています。

対してMELSOFT MaiLabMaiLabで重要になってくる専門知識は、第一線で働く方々のノウハウ・現場の知識ではないかと思っております。ツールの操作だけならだれでも行えますが、診断モデル作成は経験者の判断を基にしていくので重要になってくると思います。

MELSOFTMaiLabの特徴

簡単分析

MELSOFT MaiLabには、質問にいくつか答えるだけで診断モデルが作成されるAutoMLの機能が準備されており、機械学習の手法や前処理等を気にすることなく、誰でも手軽に分析からタスク作成まで、このツールのみで行えます

ブラックボックスになりがちな診断モデルも、寄与度(各変数が診断モデルの性能にどの程度影響を与えているか)が表示されるため直感的に分かり易くなっています。(図1)

対して詳細画面のF1スコアや混同行列は知識のある方人向けかと感じます。(図2)

図1 診断モデル作成時の結果画面(右棒グラフが寄与度)
図2 診断モデル作成時の結果詳細画面

高度な前処理機能

前処理を自動でやってくれる作業もAutoMLに含まれます。
何度か自動モデル作成を体験してみて、MELSOFT MaiLabではテーブルデータと波形データである程度の型が用意されており、各ブロックを使用するかどうか、また閾値は何にするかを自動で処理している様子が見られました。

ある程度MELSOFT MaiLabの前処理ブロックでデータを整形してくれるとはいえ、なるべくノイズが混ざっていないデータの方が望ましいです。MELSOFT MaiLabに限らず他のAI・データ分析ソフトウェアや分析する方に依頼する時も喜ばれると思います。

図 MELSOFTMaiLabのワインのサンプルデータでAIを自動作成した際のフロー
高速中間高精度
前処理ブロック●欠損値処理
●カテゴリエンコーディング
●外れ値処理(上下)
●スケーリング
高速の前処理に加え
●日時エンコーディング
●変数削除
中間の前処理と同じ
分析ブロック●ランダムフォレスト
●勾配ブースティング決定木(LightGBM)
高速の分析に加え
●DeepLearning
中間の分析に加え
●勾配ブースティング決定木(XGBoost)
●k近傍法
表 テーブルデータにおける各実行で使用されるブロック
図 MELSOFTMaiLabの波形のサンプルデータでAIを自動作成した際のフロー
高速中間高精度
前処理ブロック●区間生成
●区間特徴量生成
●欠損値処理
●カテゴリエンコーディング
●スケーリング
高速の前処理に加え
●変数削除
中間の前処理と同じ
分析ブロック●オートエンコーダ(試行回数0回)●オートエンコーダ(試行回数20回)●オートエンコーダ(試行回数100回)
表 波形データにおける各実行で使用されるブロック

完全に論文の内容外の余談なのですが、実はMELSOFT MaiLabの取扱説明書がかなり充実しており、一読の価値ありです。三菱電機が公開している取扱説明書、分厚いものが多いのですが、こちらも負けず劣らず全体で586ページ。各種ブロックに関する説明はp.227-464の驚異の237ページにわたり説明があります。(全体の約4割!

読むだけで結構データ分析に詳しくなるのではないかと思っております。

効果的かつ高精度な学習

ディープラーニングやハイパーパラメータ等、ユーザ側に敢えて見せていない部分もあります。パラメータを意識させないことでぐんとデータ分析に対する敷居が下がっているように感じます。機械学習・AIエンジニア向けではないので変に自由度があるよりは良いですね。

もし診断モデルの結果に満足がいかない場合は、データサイエンティストに依頼したり、下記のように自身でカスタマイズするのも一つだと思います。

診断モデルの自由なカスタマイズ

通常は診断モデルの作成は「自動」で問題なく精度の良いモデルが作成されると感じるため、診断モデルをカスタマイズしなくても問題ないと思います。

診断モデルのカスタマイズは、マウス操作でのブロック配置が基本なので、特段迷うことなく操作できると思います。ただパラメータ設定がユーザー任せになるので、慣れている方や物足りなくなった方向けの機能だと思います。

自動で診断モデルを作成した際の各ブロックの名称が英語になってしまうのは仕様なのでしょうか。
ユーザがカスタマイズ時に新たに設置したブロックは日本語になっているので、どういうことだ?と頭を悩ませております。

データ活用での高い利便性

一般的なデータ分析ソフトウェアでは診断モデルの運用機能 まで持つものは少なく,別途システム構築が必要になる。 MELSOFT MaiLabは診断モデルの作成と運用を一つのソフトウェアで実現しており,同一パソコン上又は別パソコン上にデプロイしてそのまま運用が可能である(図8)。

確かに分析機能だけ持つソフトはたくさんある印象がありますが、診断までできるソフトはあまりないと思います。データ収集~分析~診断モデル作成~運用まで1本のソフトで完結するので使いやすいです。

また大きな利点は「MELSECのPLCやと直接やり取りできること」だと思います。直接デバイス値を参照・書き込みできるので、論文にもあるようにデータ収集や診断のシステムを別途用意すること無くMELSOFT MaiLabでほぼ完結できるのはありがたいです。

活用事例

これはMELSOFTMaiLabの公式サイトやパンフレットに載っていますが、最適なパラメータ提案(テーブルデータ)と異常の要因推定(波形データ)を例として挙げています。直近のバージョンアップでビットデータも扱えるようになったので、活用範囲が広がったのではないでしょうか。

おわりに

以上で「三菱電機技報からみるMELSOFT MaiLab」というテーマの備忘録は終了です。

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この記事を書いた人

普段はAI・データ分析に関する業務を行なっています。
MELSOFT MaiLab、AzureOpenAIService、Azure、PowerBI 他

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